知っている人は知っているらしいのですが、世界中で生産されているコルクの、実にほぼ半分がポルトガル産なのだそうです。ワインの栓として使われるイメージが強いコルクですが、その背景には、地中海性気候に恵まれた土地で育つコルクガシの存在があり、長い年月をかけて育て、伐採し、乾燥させ、加工するという、実に手間のかかる工程が隠れています。ポルトガルでは、このコルク産業が古くから国を支える重要な基幹産業のひとつとなっており、技術の蓄積も豊富で、品質の高さには定評があります。そうした事情から、世界のコルク市場において、ポルトガルが圧倒的なシェアを誇っているというのも、うなずける話です。
……とはいえ、この事実と私の日常とが、直接深く関わっているかというと、実のところそうでもありません。ワインを頻繁に飲むわけでもなく、コルク栓の違いを語れるほどの通でもありません。ただ、ものづくりをしている者として、日常的にコルクボードを愛用している、という点において、ほんのりとした縁を感じているだけです。
私の作業場には、常に一枚のコルクボードが置かれています。その用途は多岐にわたりますが、もっとも頻繁に使うのは、手縫い作業の際に縫い穴を開けるための下敷きとしてです。革に菱目打ちや目打ちを当てる際、作業台に直接刃先や針先が当たってしまうと、台を傷つけてしまいますし、刃物自体も痛めかねません。その点、適度な弾力を持つコルクボードは、衝撃をやさしく受け止めてくれ、作業をスムーズに進めるための、いわば縁の下の力持ち的存在です。
また、目打ち類や菱目打ち、千枚通しなど、先端の尖った道具の一時的な置き場としても、コルクボードは非常に重宝します。ちょっと手を止めたい時、何気なく突き刺しておけば、転がる心配もなく、安全に、しかも省スペースで管理できます。道具を探す手間も省け、作業の流れを止めることなく続けられる点で、これほど便利な存在はありません。
そんな頼もしいコルクボードですが、長年酷使しているうちに、さすがにその表情も疲れてきました。無数に開けられた針穴や刃先の跡が積み重なり、表面はぼろぼろ。部分的には欠けてしまい、弾力も以前ほど感じられなくなっています。穴を開ける際に、わずかながら抵抗感が変わってきたのを感じ、「そろそろ寿命かな」と思うようになりました。道具は消耗品であり、使い込むほどに味わいが出る一方で、役目を終える時も確実にやって来ます。コルクボードもまた、その例外ではないようです。
さて、一口にコルクボードと言っても、その種類は意外なほど多岐にわたります。ホームセンターや文具店、手芸店などで並んでいる商品を眺めてみると、コルク片が非常に細かく、均一に詰められたものもあれば、比較的粗めで、コルクの粒がはっきりと視認できるものもあります。厚みや密度、表面の仕上がり、裏面の処理方法などもさまざまで、すべてが同じ性能というわけではありません。
細かい粒子で構成されたコルクボードは、表面がなめらかで、細かい作業に向いている反面、衝撃吸収性はやや控えめな印象があります。一方、粗めのコルク片を用いたものは、弾力に富み、刃先をしっかりと受け止めてくれる反面、表面の凹凸が気になる場合もあります。どちらが良い、悪いという話ではなく、用途や好みによって選ぶべきタイプが変わってくる、というだけのことなのですが、この「選ぶ」という行為自体が、実はなかなか悩ましいのです。
今使っているコルクボードも、購入当初は特に深く考えず、「まあ、これでいいか」と手に取ったものでした。しかし、長年使い込むうちに、良い点も不満点も自然と見えてきます。次に新調する際には、もう少し吟味して、自分の作業スタイルに合った一枚を選びたい。そんな思いが、日に日に強くなっています。
新しいコルクボードを探す旅は、もしかすると、思いのほか奥深いものになるかもしれません。ポルトガルのコルク林から始まる壮大な物語に思いを馳せつつ、次の一枚との出会いを、ひそかに楽しみにしている今日この頃です。

コメントを残す